いつもとは違う料理になる!?野菜灰汁抜きと栄養を逃さないための基本知識

健康

野菜を茹でる時に、水面に浮く灰汁取りを行った事がある方は多いかと思いますが、いくら水面の灰汁をとってもなかなか灰汁が無くならず、気づいたら野菜を茹ですぎていたという経験をされた方もいらっしゃるのではないでしょうか。

今回は、その灰汁の正体と、灰汁との付き合い方をご説明させていただきます。

1.そもそも灰汁とは?

読んで字のごとくですが、灰汁とは元々、木材などを焼いて出る灰を水に浸け、その際の上澄み液の事を指していました。上澄み液は食材の苦味を抜き、殺菌する目的で使われていたのですが、今では、食材から出る苦味そのものを灰汁と呼ぶようになっています。

1-1.意外と知られていない灰汁の正体

そんな食材から出る灰汁の正体ですが、肉類などの動物性から出るものと、野菜を中心とした植物性のものとで違いがあります。どちらも味や見た目などの理由から取り除かれる事が多い半面、実は植物性の灰汁は、植物自身にとって無くてはならないものなのをご存知でしょうか。

1-2.植物にとって何故必要?

そもそも植物性の灰汁の正体は植物が虫や動物などから身を守るために作る毒素や苦み、刺激成分です。それらが過熱された事で出てきた物であり、それらは人にとっても有害なものであることが多くあります。

つまり、植物の外敵に「あまり食べたくないな」と思わせる戦略として、灰汁が存在しているのです。

2.灰汁は人にとってどれほど有害なの?

shutterstock_196783703灰汁の有害性についてですが、先にご説明させていただいたとおり、植物が身を守るための存在ですので、やはり人がそれを食すことにもリスクがあります。

2-1.野菜の灰汁に含まれる有害物質

植物性の灰汁の身近な例でご説明させていただくと、ほうれん草に含まれる「シュウ酸」が有名です。シュウ酸は苦みに加え、食物から得られるカルシウムと結合して、カルシウムの吸収を阻害したり、結石の要因となることもあります。

また、山菜を茹でる際の灰汁にはチアミナーゼという酵素が含まれており、脳神経の働きに必要なビタミンB1を破壊してしまう作用がある事から、脚気や代謝の抑制に繋がるため大量に摂取する事は避けるべき成分です。

2-2.灰汁抜きは悪抜き?

このような理由から灰汁取りは重要であるとされていますが、昨今の研究では灰汁の中には抗酸化作用の強いポリフェノールやタンニン、発がん抑制の作用があるとされるサポニンなどが灰汁に含まれることが分かっているため、必ずしも体に悪い影響があるとは言えません。やはり、その食物の灰汁にどのような成分が含まれているかを理解し、多く食しても良いかを判断する事が最善だと言えるでしょう。

3.灰汁抜きの方法

shutterstock_562681021では、野菜を調理するときに出る灰汁の抜き方として最適なのは、どのような方法になるのでしょうか。
灰汁抜きは食材によって方法は様々です。

3-1.灰汁抜きの種類

灰汁抜きとして代表的なのは「水にさらす」という方法です。例えば、ゴボウを溜めた水に浸けておくと水が変色しますが、これはゴボウからタンニンが流れ出た結果です。

また、一番身近で、多くの人が目にしたことがあると思われるのが「茹でる」という方法です。茹でる事でやはりお湯の色が変わりますが、注意したいのは茹ですぎると大事な栄養まで流れだしてしまので注意が必要です。

他にも、「酢水にさらす」「米ぬかを入れたお湯で茹でる」など様々な方法がありますが、食材により最適な方法は違います。

3-2.勘違いされがちな灰汁抜きの方法

「茹でないと灰汁抜きができない」と思われている方が意外と多いのですが、実は上記のとおり、水にさらすだけでよい野菜もあります。もちろん、ホウレン草や小松菜といった、どうしても茹でないと灰汁抜きができないものもありますが、イモ類やナスなどに関しては水、塩水にさらすといった事で灰汁抜きが可能な野菜が多いのです。

専ら、一般的に食材として使われることの多い野菜については、塩を入れた熱湯にサッと通し、冷水で冷やした後に水気を絞るという事が灰汁抜きの基本とされています。

4.灰汁は野菜の栄養と紙一重

shutterstock_535236598既述させていただきましたとおり、灰汁取りを意識しすぎてしまうと栄養価を損ねる可能性もあります。何故なら、灰汁の中には栄養素が含まれていることも多くあるからです。

4-1.灰汁に栄養が含まれている分かりやすい例

野菜ではなく、しゃぶしゃぶやカレー作りの時のお肉で思い出すと分かりやすいかもしれません。

お肉を入れたお湯には濃い灰汁が浮かぶのを見たことがあるかと思いますが、あの灰汁には、タンパク質や旨味成分が含まれているため、あまり灰汁取りをしすぎてしまうと味が損なわれ、摂取できる栄養素も少なくなるのです。

4-2.野菜の灰汁抜きもやりすぎは禁物

ここまでの考え方は野菜灰汁抜きについても同じことが言えます。

例えば、何度か例に出したホウレン草を茹でると、シュウ酸という身体に良くない成分が灰汁として出てくるとは申し上げましたが、同時に水溶性であるビタミンCは水に浸けている間にどんどん流れ出ていってしまいます。つまり、茹ですぎると灰汁も栄養も抜けるため、本当に食べるだけの食材になってしまうのです。

灰汁を気にしすぎるあまり、過度な灰汁抜きを行った結果、本来摂取できるはずの栄養まで抜けてしまい、食べる事の醍醐味を失うことになりかねませんので、やはり食材により適切な灰汁抜きを知っておくことが重要なのです。

5.大事なことは程よく灰汁を抜き、栄養もしっかり摂れる料理をする事

ここまで灰汁について、「灰汁の正体と存在する理由」、「有害であるか、無害であるか」、「灰汁の取り方」などご説明させていただきましたが、世間では「灰汁=悪」として邪険にする向きがありますが、灰汁は食材から出てきた様々な成分ですので、一概に悪者にする必要はありません。

事実、灰汁の事をここまで気にしているのは日本人くらいではないかと言われており、海外のシェフにしてみれば「灰汁は旨みだから、取らない」という人もいるくらいなのです。

仮にホウレン草の灰汁抜きをしなかったからといって、直ちに健康被害があるわけではありません。大事なのは、有害な成分を取り去るという事と栄養を保つということのバランスを取り、「美味い!」と言ってもらえるような楽しい料理をすることです。

灰汁を抜きすぎて旨味のない寂しい味になっては、料理をする人も食べる人にもつまらないものになってしまう可能性もあります。全ての食材を網羅しましょうとは申しませんが、せめて、よく使う食材については灰汁抜きと栄養素の関係を確認しておくと、日々の料理にも変化生まれるかもしれません。

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