ぬか漬けを作るときに楽しみでもあり、ちょっと面倒でもあるのは、「かき混ぜの作業」ではないでしょうか?手をかけて作ったぬか漬けはとても美味しいのは知っていると思いますが、そもそもぬか漬けはなぜかき混ぜが必要なのか、考えたことはありますか。ぬか床について多くのことを理解している人は少ないかもしれません。今日は、ぬか漬けには欠かせない、ぬか床を混ぜることについて考えていきましょう。
1.ぬか床の栄養をおさらい
まずはぬか床の栄養について見ていきましょう。ぬか漬けは多くの漬物のなかでも栄養が豊富なことで有名です。なぜ漬物のなかでも群をぬいて栄養が豊富なのか、それはぬか床に含まれる乳酸菌やビタミンがポイントのようです。
1-1.なんといっても乳酸菌が豊富
ぬか床には「植物性乳酸菌」が含まれています。そもそもぬか床は、玄米を精米した時にでてくる「米ぬか」を原料としています。米ぬかには、カルシウム、リン、鉄分やビタミンB1など、もともと豊富な栄養が含まれているのです。それを発酵させることにより、さらに植物性乳酸菌が増え、ぬか漬けを食べることにより生きて腸まで届いた乳酸菌が腸内環境を整えてくれます。
植物性乳酸菌が胃腸に届くと、善玉菌が増え、便秘の改善やアレルギー症状を抑えるといった働きをしてくれます。また、腸内環境が整うということは、身体の免疫力もアップします。風邪予防や基礎体力をつけるためには、日ごろからぬか漬けを食べることがおすすめです。
参照https://mintsiesta.com/nukaduke/
1‐2.豊富なビタミン群
ぬか床にはビタミンB1、B2が豊富に含まれています。もともとぬか床の原材料である米ぬかには、ビタミンB1、B2が含まれており、糖質の代謝をサポートしてくれるためダイエット効果にも期待ができます。
また、ぬか床にはビタミンA、ビタミンEも多く、免疫力をアップさせてくれる効果に期待ができます。ビタミンAは乾燥肌にうるおいを与えてくれるので、冬の乾燥した時期には美肌サポートにも役立てることができるでしょう。また、抗酸化作用のあるビタミンEも積極的に摂取したい栄養素です。悪玉コレステロールの酸化を防ぎ、血液をサラサラにする役割があります。
2.ぬか床はどうして混ぜる必要があるのか
ここからは、本題である「なぜぬか床を混ぜる必要があるのか」について見ていきましょう。ぬか漬けは、日本を代表する保存食です。ぬか漬けを作るためのぬか床は古くから伝われており、家庭によっては50年以上も同じぬか床を使っている、というケースもあます。しかし、どのようなぬか漬けもかき混ぜることが基本であり、混ぜることによって美味しいぬか漬けになるのです。
2‐1.乳酸菌を育てるため
ぬか漬けを混ぜる理由として、まず挙げられるのが「乳酸菌を育てるため」ということです。乳酸菌は空気に触れることにより、働きが活性化します。逆にぬか床を混ぜず、まったく空気に触れることがないと酸欠状態になってしまいます。こうなると乳酸菌の働きが弱まり、腐敗菌の活動が活発化し、嫌な臭いを発生させてしまうのです。
腐敗菌は空気がキライであり、ジメジメと湿っている密封された場所で繁殖をしていきます。ぬか床をかき混ぜないということは、この腐敗菌を増やすことであり、ぬか床を腐らせてしまうことに他ならないのです。
2-2.真ん中のぬか床はあまり混ぜない方が良い
ちなみに、ぬか床をかき混ぜる方法は、ただ単にかき混ぜれば良いということではありません。ぬか床の真ん中あたりにはたくさんの乳酸菌が存在しており、その部分はあまり混ぜないほうが漬物は美味しくなるのです。
ぬか床の表面には臭いのもとにもなる産膜酵母がたくさん存在します。混ぜないと表面の産膜酵母はどんどん増えてしまうため、定期的にかき混ぜてぬか床に移す必要があります。また、ぬか床の奥には空気のきらいな酪酸菌が存在しており、こちらも定期的に空気に触れさせないとシンナーのような臭いを発生させます。ぬか床を混ぜる際は、表面と底を入れ替えるように混ぜるのがポイントです。
2-3.ぬか床をまったく混ぜないとどうなるか
ぬか床は1週間ほど混ぜなくてもすぐに腐るということはありません。しかし、夏場の暑い時期に常温に置き、まったくかき混ぜないといったことをすると、次のようなトラブルが生じます。
- ツンとする悪臭がひどくなる
- 白い膜が表面を覆う
- 水分がたくさん出てくる
- 漬けておいた野菜は酸っぱすぎて食べられない(異常発酵)
ぬか漬けを全くかき混ぜないと、酵母が空気に触れることができず、逆に空気を嫌う乳酸菌が活発になり、酸を多く作り出してしまいます。これにより嫌な臭いが発生し、カビが発生してしまいます。1週間程度なら手入れをしてぬか床を復活させることができますが、1カ月以上も放置してしまうとカビが多く発生し、なかなかもとのぬか床へ戻すことはできません。
参照http://www.kyousei-nara.jp/nukadukegadameninal/nukadsukeshippairei.htm
2-4.ぬか床を混ぜすぎるのもNG
では、逆にぬか床をずっとかき混ぜ続けるのはどうなのでしょうか。結論からいうと、あまりにもかき混ぜすぎたぬか床では、美味しい漬物はできません。ぬか漬けが美味しくなる理由は乳酸菌が野菜を発酵させてくれるからですが、かき混ぜすぎたぬか床は必要以上に空気を含んでしまいます。空気に触れすぎると乳酸菌は育たなくなり、野菜が上手に発酵しないのです。
ぬか床のかき混ぜは、1日1回、30秒ほどで十分です。また、冷蔵庫に保存されているぬか床の場合、気温が低く乳酸菌が育ちにくいため、かき混ぜは2~3日に1回程度でも十分です。
3.正しいぬか床のかき混ぜ方
ここからは、正しいぬか床のかき混ぜ方を改めて見ていきましょう。基本的なやり方としては、表と裏のぬか床を取り換えるようにかき混ぜていきます。
3-1.底をからごっそり入れ替えるようにかき混ぜる
ぬか床のかき混ぜ方 ポイント
- 表面と底にある部分のぬか床をしっかりと入れ替えるようかき混ぜる
- 真ん中の部分はあまりほじくり返さない
- 野菜を取り出したら、全体を入れ替えるようごっそり混ぜる
- かき混ぜたあとは、ぬか床の表面をポンポン叩き空気を抜く
ぬか床のかき混ぜはそれほど難しいことはありません。ただ、ぬか漬けが酸っぱくなり過ぎたら、それは乳酸菌が増えすぎている可能性があります。その場合は、ぬか床の真ん中部分もしっかりと混ぜるようにしましょう。
3-2.小さな容器の場合はそれほど混ぜなくてもOK
ぬか漬けは昔は大きな樽で漬けている家庭が多かったものの、いまでは大き目のタッパーで冷蔵庫で漬けている家庭が多いようです。漬け樽は置き場所に困り、臭いがもれるため敬遠する人もいるでしょう。
3000ml以下のタッパーなどでぬか漬けをつけている場合、毎日のかき混ぜはほとんど必要ありません。これは、野菜を漬けたり取り出したりするだけで、十分かき混ぜていることになるからです。野菜を漬けない状態が続く場合は、軽く混ぜる必要がありますが、基本的には野菜の出し入れでかき混ぜていることになります。特に、冷蔵庫での保存は乳酸菌が育ちにくいため、あえてかき混ぜる回数を減らした方が美味しい漬物になるのです。
参照http://apple-weblog.com/how-to-mix/
3-3.ぬか床は素手で混ぜないとダメ?
昔はぬか床を混ぜる際、素手で行わないと美味しい漬物にはならない、と言われていました。その理由は次のようなものがあります。
- 素手のほうがぬか床の状態が分かりやすい
- 手の常在菌がぬか床に入ることで美味しくなる
ぬか床の水分量は、見た目でも分かりますが、もっとしっかり状態を把握するのは素手で触るのが一番です。ビニール手袋をしたうえではぬか床の柔らかさが伝わらず、状態を把握しにくいことはあるでしょう。また、有名なのが「手の雑菌が入ることでぬか漬けが美味しくなる」という説です。これには科学的な見解も分かれてはいるのですが、確かに手で混ぜた方が美味しくなるという意見はいまだ多いです。
しかし、手が汚れすぎていてぬか床にばい菌が繁殖したり、ぬか床を混ぜることで手に炎症を起こしたりするのは良くありません。近年では食品衛生の観点から、ビニール手袋を着用してぬか床を混ぜた方が良いという意見も多いです。手が汚れるのが嫌な場合は、しゃもじやビニール手袋を使っても構いません。また、素手でまぜる際には手をよく洗い、混ぜたあともしっかりとぬかを落とすように心がけましょう。
まとめ
ぬか床は、ある程度かき混ぜないと腐敗菌を育てることになり、育ってほしい乳酸菌は逆に増やすことができなくなります。あまりにもかき混ぜすぎても良くないですが、何週間も放置してしまうのは避けましょう。
ただ、冷蔵庫でぬか床を保管している場合は、一週間ほど放置してもぬか床が腐ることはありません。その場合はこまめにかき混ぜて空気を取り入れたり、殺菌効果のある緑茶の葉を入れたりして、再び良い状態のぬか床になるようサポートしてあげましょう。
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