日本酒を作るときにできる「酒粕(さけかす)」は栄養価の高い食品です。
酒粕で粕床を作ってしまえば、野菜を漬けることもできますし、肉や魚の臭みを消して味をまろやかにすることもできます。そして、甘酒として夏の栄養ドリンクにすることも可能です。またそのままお味噌汁にいれて粕漬にしたり、お菓子に入れて活用することもできるでしょう。ここではそんな酒粕の種類や保存方法を見ていきましょう。
1.酒粕の基本的な知識
酒粕と聞くと、日本料理の料亭で使うものや、日本酒が好きな人限定といったイメージがあるかもしれません。昔はやや敷居が高いイメージがあった酒粕ですが、2000年代に「麹ブーム」が起きたことをきっかけに、酒粕も広く売られるようになりました。まずは酒粕とは何か、どこで手に入るのかなど見ていきましょう。
1-1.酒粕はこんな使い方がある
酒粕の使い方は、一昔前では「魚の粕漬」くらいしか調理方法がありませんでした。確かに切り身魚に酒粕を漬け込み、じっくりと味のしみ込んだ魚の粕漬はとても美味しいです。しかし独特のクセがあるのも事実であり、子供は苦手とする場合も多いです。
しかし、いまではさまざまな酒粕を使った料理のレパートリーが増えました。酒粕は魚料理だけに使うものではありません。簡単な使い方は次のようになります。
- 料理酒として使う
- 味噌汁に入れる
- 魚、肉、野菜に漬け込んで粕漬ができる
- 甘酒
- 化粧水としても活躍
これ以外にも調味料として使ったり、何かしら料理のアクセントとして活用することができます。一度も酒粕を使ったことがないという人はもったいないです、まずは酒粕を購入することから始めてみましょう。
1-2.酒粕はどこで買うことができる?
酒粕はいまや多くの店で売られています。スーパー、酒屋、インターネットなど。大型店の100円ショップなどでも売っていることがあります。
初めて購入する人は、まずはスーパーで買ってみるのがおすすめです。豆腐や納豆が置いてある場所に陳列されていることが多く、値段も200円~500円程度で購入できることが多いでしょう。また、酒造や酒屋などに行くと、高い日本酒から作られた高級酒粕が売られていることもあります。酒粕の調理に慣れてきたら、こうした特別な酒粕に挑戦してみても良いでしょう。
1-3.酒粕と米麹との違い
2000年代に入り1大ブームを引き起こしたのが「麹(こうじ)」です。米麹や塩麴は、料理に使うと素材の味を引き立て、非常に美味しくなると話題になりました。この時期に酒粕にも注目が集まり、米麹と酒粕は同じような使われ方をしていることから、その高い栄養価に注目が集まりました。
酒麹も米麹も、「素材の味を引き立てる」「素材をやわらかくする」といった点は同じです。ただ、両者とも「甘酒」の材料として使われることが多く、その栄養価は若干の違いがあります。
まず米麹の甘酒は蒸したお米に麹菌をつけて時間を置くことでできあがります。一方の酒粕の甘酒は米麹をアルコールで発酵させた「もろみ」が原料です。砂糖とアルコールを加えることで美味しい甘酒になります。
砂糖が含まれている分、カロリー的には酒粕の甘酒のほうが若干高いでしょう。しかし、含まれている栄養素は米麹の甘酒よりも多いため、栄養的な面では酒粕の方がおすすめです。手作りで甘酒を作る際は、砂糖ではなくはちみつでも代用できるので、これを飲んだからといって太るということはまずありません。
2.酒粕の形はいろいろな種類がある
酒粕といっても、その素材や種類はさまざまあります。まずはよく見かけるものから珍しい酒粕まで詳しくみていきましょう。
2-1.酒粕の種類、形状
2-1-1.板粕
板粕とは、スーパーで多く売られている固形型の酒粕のことです。四角の形が多く、結構な厚みと固さがあります。これは日本酒を絞る際に圧縮機を使うため、残った酒粕が固形となって残るためです。このまま使うのではなく、水に溶かしたり練ったりして使います。
2-2-2.ばら粕
ばら粕は名前の通りパラパラした粉末に近い状態の酒粕です。圧縮機からこぼれ落ちた酒粕が使われていることが多く、品質としては板粕と同じになります。ただ粉末に近い状態になっている分、水に溶けやすく使いやすいことがあるでしょう。
2-2-3.練り粕
練り粕は、あらかじめ酒粕を練り合わせてあるものです。やわらかいペースト状になっているため、そのまま野菜や肉を漬け込むことができる商品もあるでしょう。初心者でも簡単に使うことができます。
2-2-4.踏込粕
踏込粕は奈良漬けなどの漬物用として売られていることが多いです。酒粕を半年ほど熟成発酵させたもので、茶色や黄金色をしています。甘みが強いのが特徴で、漬物としてつかうとアルコールの風味が効いた美味しい漬物を作ることができるでしょう。
2-2.酒粕に使われるお酒の種類とは
2-2-1.純米酒
酒粕として流通している多くが純米酒からできています。純米酒は米と米麹だけで作られているお酒のことです。お米本来の味わいを楽しむことができ、とくに和食に合います。
2-2-2.吟醸酒
吟醸酒は、米を40%以上省いて作られたお酒です。また50%以上省いたものを大吟醸酒といい、さらにお米を磨く手間がかかります。吟醸酒の酒粕は板状になることはありません。ばら粕や練り粕の形状で売られます。少量しか取れないため、価格が高いのも特徴です。
2-2-3.普通酒
普通酒は、吟醸や大吟醸に当てはまらないものをいいます。醸造アルコールを白米の10%以上使用したものや、調味料を添加したものがこれにあたります。安価で売られている酒粕は、この普通酒が主な原材料となっていることが多いでしょう。
3.酒粕の保存方法と使い方
ここからは、酒粕の保存方法と使い方について見ていきましょう。一度覚えてしまえば、酒粕はキッチンに欠かせない食材として活躍してくれます。
3-1.簡単な甘酒の作り方
材料
- 固形酒粕 大さじ1~2
- お湯
- はちみつ 少々
作り方
- マグカップに酒粕とお湯を少々入れて混ぜる
- お湯を注ぎ、好みで砂糖やはちみつ、しょうがなどを入れて完成
あらかじめたくさんの酒粕を使い、鍋で煮て甘酒を作る方法もあります。ただ最も簡単な甘酒の作り方は上記のやり方であり、お湯がなくても、水で混ぜて電子レンジで温めれば簡単に作ることができるでしょう。
3-2.時短 粕床レシピ
酒粕は「粕床」を作ることにより、たくさんの料理に使うことができます。高濃度のアルコールと混ぜて作ることが一般的ですが、ここでは水で作れる簡単粕床を紹介します。
材料
- 市販の酒かす(100g)
- 水50ml
[作り方]
- 酒かすと水を耐熱容器にいれます
- 電子レンジで40秒間加熱。
- しっかりとかき混ぜます。
- ペースト状になれば、かす床(かすどこ)の完成です。
この粕床は一度だけの使い切りレシピですが、野菜や肉を漬け込めばあっという間に簡単な粕漬が完成です。アルコールが苦手な人でも楽しめるため、お子様がいる家庭にもおすすめです。
3-3.酒粕の保存方
酒粕は生きています。購入したら早めに使い切ることで美味しさと栄養を高く取り込むことができますが、保存したい場合は次のような方法があります。
まず「常温保存」では、直射日光を避け涼しい場所を選びましょう。開封後は空気に触れてしまうので、2週間程度で使い切るようにします。それ以上保存したい場合は「冷蔵保存」がおすすめです。冷蔵保存することで菌の活動が抑えられ、開封しても半年程度は持つことができるでしょう。最後に「冷凍保存」はもっとも長期保存が可能です。冷凍することで菌の呼吸を止め、熟成が抑えられます。保存の目安は1年間です。
まとめ
いかがでしたでしょうか?酒粕は甘酒をはじめ、実に多くの料理に使うことができます。
もともとアルコールが含まれている酒粕は、冬に積極的にとることにより体を温める効果があります。そして、冬だけではなく夏にも積極的に摂りたい食材です。とくに酒粕を半年ほど熟成発酵させた「踏み込み粕」は夏限定で売られていることの多い酒粕であり、さっぱりとした野菜の漬物に使うことができます。エアコンの人工的な風に冷やされることの多い夏こそ、積極的に酒粕を摂取して体を芯から温めていきましょう。
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