ご飯で作るご飯のお漬物!?青森の郷土料理「すしこ」とは

作り方

全国にはさまざまな漬物があります。信州の野沢菜、東北のいぶりがっこ、奈良県の奈良漬けなど、全国における漬物を数えたらきりがないかもしれません。

しかし、そんななかでも非常に珍しい漬物が青森県にあります。それは「すしこ」とよばれる青森の郷土料理です。この漬物は、なんとお米が原材料になっており、初めて見る人にとってはとても驚く漬物になっています。

1.お米でできた漬物!?「すしこ」とは

すしこは、青森県が発祥の郷土料理です。しかし、青森県民すべての人が知っているというわけではなく、津軽地方の西北地域限定ならではの漬物になっています。では、この謎の「すしこ」について見ていきましょう。

1-1.青森の郷土料理、「すしこ」とは

すしことは、全国的にも非常に珍しいごはんを原材料とした漬物です。ご飯といっても、正確にはもち米が使われています。蒸したもち米、赤しそ、キュウリ、キャベツなどの浅漬けを入れ、乳酸発酵した漬物です。

全体的には赤い色が特徴であり、さっぱりとした味を楽しめます。つくる人や地域によって入っている材料にも違いがあり、砂糖が加えられていることも多いです。ご飯が原材料なのに、白いごはんにかけて食べても美味しいです。

1-2.青森県のなかでも珍しい漬物

すしこは、青森県民すべての人になじみがある漬物ではありません。お米が材料になっていることでもわかる通り、コメどころである「津軽地方」を中心に作られています。しかも、津軽地方のなかでも西北地域に限定されており、稲作地帯を中心に親しまれてきました。そのため、つがる市のスーパーなどではパック詰めになったすしこがよく売られています。しかし、青森のなかでも東北地域の人にとっては珍しく、食べたことがないという人も多いです。

津軽平野には、もともと白米に食紅や赤しそなどを使い、赤飯のようにして食べる風習がありました。稲荷寿司や手巻き寿司なども赤いごはんを使い、お祝いの席などに用いられることが多いのです。すしこが誕生したのも、この赤いごはんがきっかけになり、ほかの野菜とともに漬け込まれたのかもしれません。

1-3.すしこが誕生したきっかけ

すしこが生まれたのがいつなのかは、明確に分かってはいません。しかし、昭和初期の時代には、一斗樽に漬け込み、大量のすしこを作る家庭が多かったようです。それは、寒い場所にある過酷な稲作地帯ならではの知恵です。秋になると、一番体力が必要とされる作業である稲刈りが始まります。この稲刈りに対応できる体力をつけるよう、すしこは毎日食卓に出され、農家の人たちの健康をサポートしてきました。

すしこには、浅漬けした赤紫蘇や、きゅうりやキャベツなどが入っています。これにより鉄分、カルシウム、ビタミンを補うことができるでしょう。また、漬け込むことで発酵し、豊富な乳酸菌を摂取することができます。これにより、多く栄養を効率よくとることができ、体力回復のサポート食としても注目されています。

2.すしこを手作りしてみよう

伝承料理であるすしこは、青森県に行かなくても家庭で作ることができます。材料もスーパーで手軽に入るものばかりなので、ぜひ作ってみましょう。

2-1.すしこのレシピ

材料

・キャベツ…1個
・きゅうり…4~5本
・塩…大さじ4

・もち米…4合
・水…5カップ

・赤じそ…100グラムほど(およそ150枚)
・塩…1つかみ
・お酢…大さじ3
・クエン酸…大さじ1
・ビート(あれば)…少々

■作り方

  1. キャベツは1センチ幅にざく切りし、キュウリは輪切りにする。塩を振り、よく揉んで一晩寝かせる
  2. 赤しそはみじん切り、塩ひとつかみを加え、よく揉みこむ。黒っぽい汁が出るので、それを捨てたら塩をもみこむことを3回ほど繰り返す。赤い汁が出てきたらストップ。
  3. 2にクエン酸を振り、しそを絞って、出た汁180㏄程度を取っておく
  4. もち米を固めに炊く
  5. 炊きあがったもち米に、お酢、砂糖、しその汁を混ぜ合わせる
  6. 1の水けをよく絞り、絞ったしそと共に5に混ぜ合わせる
  7. 千切りしたビートを混ぜ合わせて完了

ビートとは、ピーツとも呼ばれる、赤い着色ができるカブの一種です。加えることにより、さらに色鮮やかなすしこができますが、ない場合は入れなくても構いません。

手作りのすしこのポイントは、キュウリやキャベツの水けをしっかりと絞ることです。固く絞らないと、出来上がりが水っぽくなってしまうので注意しましょう。

2-2.まずは購入したい!そんなときは

すしこは手作りできるものの、もち米を4合といったように、かなりたくさんの量ができてしまいます。しかも、本来であればコメと野菜を発酵させてできるものですが、手作りのものは発酵させる過程はありません。

本格的な昔ながらのすしこが食べたいならば、やはりご当地ならではのものを購入することがおすすめです。わざわざ青森に行かなくても、アンテナショップや物産展で見かけることもあるでしょう。また、数はとても少ないものの、インターネットから購入することも可能です

3.青森特産の漬物とは

青森が発祥の漬物は、すしこだけではありません。このほかにも多くの青森県ならではの漬物が存在します。あまり良いデータではないのですが、青森県民は「血圧が高め」の人が多いとも言われています。これは、喫煙率が多かったり、寒い地方のため運動不足の人が多かったりすることが原因です。しかし、実はたくさんある漬物文化が血圧をあげている要因とも言われているのです。

漬物は食べすぎると塩分の取りすぎの要因になることもあります。しかし、すしこを始め、青森の漬物はそれほど塩分が多いものはありません。漬物だけではなく、どの食材も適量を食べたほうが良いのでしょう。では、青森ならではの漬物について見ていきましょう。

3-1.みそ大根

みそ大根は、青森の地元で製造された味噌と醤油をつかい、じっくりと大根を漬けこんだものです。漬物のなかでもかなりしょっぱい漬物として有名であり、なかにはたったひと切れでごはん1杯食べられるとも言われています。

青森県は青首大根の生産も盛んであり、たくあんを始め、多くの大根を使った漬物があります。そのなかでも昔から多く製造されてきたのがみそ大根であり、ご飯のお供や、お酒のあてに欠かせない漬物になっています。

3-2.ねぶた漬け

ねぶた漬けは、青森の漬物のなかでも比較的新しい漬物です。ねぶた祭がだんだん盛んになってきたころに合わせ、昭和40年代に製造されたといわれています。

ねぶた漬けは、数の子、するめ、昆布、大根、キュウリを合わせて作られた漬物です。イメージとしては松前漬けに似ているでしょう。数の子を中心とした海の幸と、大根をベースにした山の幸が豊富に加えられており、しょっぱすぎず、小さなお子様でも食べられるような味になっています。ごはんにかけて食べるのはもちろん、お酒のあてにして食べるのも美味しく、おかずとして一品活用しても良いでしょう。

3-3.杏の梅漬け

青森県には、見た目が巨大な梅を思わせるような、面白い漬物があります。それが「杏(あんず)の梅漬け」です。

青森は全国でも有数の杏の産地であり、なかでも大きい杏は見た目にインパクトがあると話題になりました。しかも、甘みと酸味が強いことから、梅干しのようにして活用する方法を思いついたのです。この杏は梅漬け用あんずとして地元の人たちから評判となりました。この杏の梅漬けは、一般的な梅干しとはちがい、サクサクとした食感に特徴があります。歯ごたえがあり、果物を食べるような感覚にもなるため、一度食べたら忘れられない漬物です。見た目のインパクトも手伝い、青森では非常に人気のある漬物になっています。

まとめ

もともと、東北地方は漬物の産地として有名ですが、なかでも青森にはたくさんの漬物があります。雪深い場所も多い青森では、秋に収穫できるたくさんの野菜を保存食として使い、それによりたくさんの漬物が誕生したのです。

そのなかの1つとして存在しているのが、今日ご紹介した「すしこ」です。全国的に見てもお米でできた漬物という、大変珍しいものです。青森に来た際には、ぜひすしこを中心に、多くの漬物を食べてみてください。青森の漬物は、その地方ならではの知恵が詰まっており、昔の人たちの生活を垣間見ることができるでしょう。

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