昔のにんじんと違って、最近のにんじんは甘味がありさくさくと食べやすいものが増えたように思います。そのため、にんじんによっては生でサラダとして食べたり、浅漬けとしてアレンジして食べることもできるでしょう。にんじんの甘味と香りを味わうなら、是非生で楽しみましょう。ここでは福島県の郷土料理である「いかにんじん」のレシピをご紹介します。
1.「いかにんじん」って何?
いかにんじん、その言葉を知っている人は少ないかもしれません。いかにんじんは福島県の郷土料理です。ただ、福島県全域に伝わるものではなく、福島県の中央に位置する「中通り」とよばれる地域から発祥したお漬物です。
1-1.魚類の乾物を使った伝統料理
福島の中通りは海から離れているため、新鮮な魚介類が食卓に並ぶことは少なく、昔からスルメやイカの干し物などが人気でした。海で取れた海産物を新鮮のまま保存し、それが中通りまで運ばれて多くの家庭で重宝されてきたのです。スルメはもちろん、貝柱はニシンなどの乾物は保存がきき、カルシウムなどの栄養も豊富で貴重なたんぱく源として健康をサポートしてきました。
ただ、そのままスルメを食べるにはだんだん飽きてしまうこともあり、スルメはさまざまな料理にアレンジされました。細かく切って野菜と混ぜ合わせることにより、さらに美味しく栄養の高い料理となったのが、いかにんじんです。
1-2.いかにんじんはお正月に食べられる
いかにんじんの主な材料は「いか」と「にんじん」です。しかも、いかといっても生の状態のいかではなく、手軽に手に入るスルメです。そのため、いかにんじんはコストをかけることなく簡単に作ることができます。ただ、一昔前ではスルメは貴重なたんぱく源として重宝されていたため、いかにんじんは「お正月に食べるもの」とされていました。三が日の食卓には必ずあるものとして重宝され、多くの家庭ではお正月の時期にだけいかにんじんを作ることが普通でした。しかし、いまでは手軽に材料がそろうこともあり、気が向いたときに簡単に作る家庭が増えています。そのため、いかにんじんはお正月に限らず年中作られ、郷土の味として人気があります。
1-3.おかずにもお酒のあてにも活躍
いかにんじんの作り方はいたってシンプルです。千切りにしたにんじんと、細くカットしたスルメを使い、しょうゆベースのたれに漬け込みます。火を通す場合もありますが、多くの場合はにんじんも生で食べることになるので、シャキシャキとした歯ごたえが特徴の漬物になります。また、数の子を入れる場合もあり、そのアレンジを加えると松前漬けのような漬物になります。家庭によってはお正月だけ数の子を入れ、豪華な松前漬けのようにして食卓に出すことも多いです。
いかにんじんはトウガラシを加えることでピリ辛になり、お酒のあてにもぴったりです。また、みりんを少々多めにして甘みをつければ、子供もパクパクと食べられるおかずになるでしょう。子供から大人まで多くの人が楽しめる郷土料理として、いまでは福島だけでなく全国にファンが増えています。
2.いかにんじんを作ろう
ここからは、家庭で作ることのできるいかにんじんのレシピを紹介します。福島で作られているいかにんじんは、それぞれの地域や家庭によって微妙にレシピには違いがあります。まずは、いかとにんじんだけで作る基本のいかにんじんを見ていきましょう。
2-1.基本のいかにんじん
材料
- スルメ 1杯分(小)
- にんじん 2分の1本
- トウガラシ 3本
- 日本酒適量
- 調味料 醤油2分の1カップ 日本酒4分の1カップ みりん4分の1カップ 昆布5センチ四方程度
作り方
- スルメはキッチンバサミで幅2ミリ程度の細切りにする
- 1を日本酒に入れて数時間浸す
- にんじんは細切りにカットする
- 調味料を混ぜ合わせる、トウガラシを輪切りにして調味料に入れる
- 4を小鍋にいれて煮たせる、そこににんじんを入れて火を止める
- 5を冷まし、冷めたらスルメの酒をきって加え、容器に移す
- ラップをしてそのまま1日以上冷蔵庫で寝かせる
いかにんじんの作り方は、細切りにしたにんじんといかを混ぜ合わせ、火を通した調味料を加えて寝かせる、というのが基本です。今回は大人向けのピリ辛にしていますが、トウガラシの量を調節することにより子供でも食べやすいいかにんじんになるでしょう。
2-2.昆布、数の子入りいかにんじん
次は昆布といかにんじんを加え、松前漬けのようにしたちょっと豪華ないかにんじんのレシピです。見た目も豪華になり、お正月の食卓を飾るにはピッタリの一品になるでしょう。分量も多いので、お正月三が日を楽しめる保存食としても活躍します。
材料
- スルメ 1杯分
- にんじん 3本
- 昆布 5センチ四方1枚
- 数の子 1腹分
- 調味料 醤油4分の1カップ みりん4分の1カップ みりん大さじ2
作り方
- 調味料を火にかけて煮たせ、火を止めて冷ましておく
- スルメと昆布はキッチンバサミで細切りにする
- にんじんは長さ5センチ程度の細切りにする
- ジップロックに2と3を入れる。数の子をばらしてそこに加える
- 4に1を注ぎ入れ、空気を抜くように口をとじて冷蔵庫で半日以上置いて完成
こちらのレシピはにんじんが多めなので、甘いにんじんを使うことによりさらに美味しく食べることができます。お好みでトウガラシを加えても良いでしょう。また、数の子はばらして入れるため、最初からばらこを入れても良いでしょう。数の子のポリポリした触感が加わり、松前漬けに似た豪華な一品になります。
2-3.いかにんじんは漬け込むほど美味しくなる
いかにんじんは冷蔵庫で1日以上寝かせるのがポイントです。そうすることによりスルメのうまみがより楽しめます。そのため、初日に食べたいかにんじんより、さらに冷蔵庫で冷やされた余ったいかにんじんのほうが美味しいという声もあります。日が経つにつれコクが生まれるいかにんじんですが、保存期間は冷蔵庫で5日ほどです。にんじんも生の状態なので、あまり日持ちはしません。とくに数の子や昆布を入れた状態のいかにんじんは、粘り気もあって常温だと傷みやすいので注意しましょう。
3.もっと美味しく、いかにんじんのアレンジレシピ
いかにんじんの発祥の地である福島では、その家庭ならではのアレンジがされているようです。例えば、もっとコクと甘みを出すためにみりんではなく「ザラメ」を使ったり、大人向きの味にするため「鷹の爪」を多めに加えたりする方法です。また、せっかく作ったいかにんじんも、量が多すぎると余ってしまうでしょう。そんなときは次にようなレシピにアレンジしてみましょう。
3-1.いかにんじんのチャーハン
うまみとコクのあるいかにんじんは、ご飯に混ぜ合わせてもとっても美味しいです。いかにんじんを軽くフライパンで炒め、ご飯を加えて混ぜ合わせましょう。味がちょっと足りないと感じたら、めんつゆで調整するのがおススメです。いかにんじんは中華だしの素やコンソメなどを加えて違う風味にすることもできますが、スルメのうまみとしょうゆベースの味を引き立てるには、やはり和風を中心に仕上げるのが良いでしょう。そのため、チャーハンのときはめんつゆや和風の顆粒だしで味付けをすると美味しいです。また、チャーハンだけでなく、豆腐の上にのせて豪華冷ややっこに、生サラダの上にのせて豪華なサラダのようにアレンジをすることもできます。
3-2.おにぎりにも抜群にあう
チャーハンにもピッタリのいかにんじんですが、そのままごはんに混ぜ合わせて、見た目も美味しそうなおにぎりにして食べるのもおススメです。スルメのうまみとコクがお米とマッチし、にんじんの栄養もとれる一品となります。生のにんじんの歯触りも良く、オレンジの見た目もキレイな一品です。鷹の爪を多めに加えたピリ辛のいかにんじんを使えば、大人向けのピリッとした味わいが楽しめるおにぎりになります。いかにんじんはとてもご飯と相性が良いので、ご飯の上にかけてそのまま食べても良いでしょう。また、ご飯以外の主食とも相性が良いため、焼きそばの具材として加えたり、パンの上にのせてチーズと焼いたピザトーストにしたりするのも美味しいです。
まとめ
いかにんじん、という言葉を初めて聞いた人もいるかもしれません。しかし、その名前の通り材料は基本的にいかとにんじんだけであり、調味料に漬け込むだけで簡単に作ることができます。キッチンに余っているスルメがあれば、ぜひ作ってほしい時短料理です。また、いかにんじんは多くのアレンジを加えて楽しむこともできます。本場福島の中通りには、たくさんの味が楽しめるいかにんじんが売られています。近くに寄った際には、違う味わいが楽しめる多くのいかにんじんを、ぜひ楽しんでみてください。
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