夏を元気に乗り切る薬味の代表に「しそ」があります。しかし、しそには「青しそ」と「赤しそ」の二種類が売られています。瑞々しい青しそは、見た目も涼しく食卓を彩るでしょう。もう一方の赤しそは薬味として使われることは少なく、梅干しの着色などに使われることが多いです。香りはとても似ているこの両者ですが、一体青しそと赤しその違いは何なのでしょうか。ここでは、しその種類によって違う栄養素や、おすすめの調理方法などを詳しく紹介します。
1.青しそと赤しその違いとは
ご存知のように、しそには青い葉の他にも、赤紫色の葉の赤しそがあります。まずは双方の違いについて詳しく見ていきましょう。
1-1.青しそと赤しその違いは「色素の違い」
青しそと赤しその違いは、簡単にいうと「色素」が違うといえます。
しそはそもそもヒマラヤが原産地と言われており、高度が高く暑い地方で栽培されてきました。紫がかった色合いが特徴の赤しそは、アントシアン系の色素を含んでいるため、薬味の中でも珍しい赤い色をしています。そのため、栄養を取り入れるため食材にするというよりかは、どちらかといえば着色用の葉として活躍してきました。とくに梅干しを色鮮やかに着色できるのは、赤しそのアントシアニンならではの効果といえるでしょう。赤しそには実ができます。あまり知られていませんが、赤しその実は佃煮などにして昔から食されてきました。
一方の青しそは大葉(おおば)とも呼ばれます。赤しそよりもベータカロチンが豊富に含まれているため、栄養価が、高いのは青しそともいわれています。爽快な香りを持ち、見た目も鮮やかなことから昔から薬味として用いられてきました。赤しそよりもクセがなく、いろいろな料理に使えることから、一般家庭では青しそのほうが使われていることが多いです。
1-2.栄養素はどう違う
栄養面では、若干「青しそ」のほうが栄養価が高いと言われることもあります。これは青しその方がベータカロテンの含有量が多いため、比較数値の結果そう言われていることがあります。しかし、赤しそにもアントシアニンがたくさん含まれており、もともと葉っぱという用量であることから、それほど栄養価に違いはないといえるでしょう。
また、しそは漢字で書くと「紫蘇」とかきます。この由来は、昔食中毒で苦しむ人にしそを飲ませたところ、瀕死の状態からよみがえったという逸話からきています。病人を死の淵から蘇らせたため「紫蘇」、この葉がいかに栄養価が高いということがわかるでしょう。
1-3.もともとは赤しそが基本
「紫蘇」という漢字を見るとわかるように、しそ本来の種は「赤しそ」です。青じそは赤しそが成長する過程で進化したものとなります。
青しそでないと薬味としては使えない、そう思っている人も多いかもしれません。しかし、赤しそも薬味として使うことは可能です。生のまま食べるのはもちろん、細かく切ってバジルのようにパスタに混ぜるといった使い方もできます。ただ、見た目が赤いこと、青じそに比べると独特の爽快感が少ないことなどがあるでしょう。また、園芸用で売られているしそも青しそが多く、家庭で栽培するための赤しその苗はあまり見かけません。こうしたことから、薬味使われるのは青しそが中心になっています。
2.青しその特徴
ここからは、家庭で多く使われることの多い青しそについて見ていきましょう。薬味として使われることの多い青しそですが、そのほかにも天ぷら屋炒め物など、多種多様の料理に使うことができます。
2-1.青しその栄養素
青しそにはβカロテンが豊富に含まれています。しかもその含有量は野菜のなかでもトップクラスを誇り、ニンジンやカボチャなどと比較しても非常に高いです。ヨモギやアシタバといった葉に比べても2倍以上となっています。
βカロテンには活性酸素を抑え、動脈硬化や心筋梗塞などを防ぐ効果があります。積極的に摂取することで生活習慣病を予防でき、ガン予防にもつながるでしょう。また、βカロテンは皮膚を健やかに保つ作用もあります。そのため、摂取することでハリのある皮膚をキープでき、美肌効果にも期待できます。
また青しそにはβカロテンだけでなく、ビタミンB群やビタミンE、Kといった栄養素も豊富に含まれています。鉄分の含有量も多いため、貧血に悩んでいる人は積極的に取ると良いでしょう。
2-2.青しその旬とは
青しその旬は6~9月です。園芸品としてもこの時期から売られることが多く、簡単に育てられる植物として人気があります。鉢植えでも地植えでも育てやすく。水を与えるだけでぐんぐんと成長します。
また、青しそ独特の香りは「ぺリアルデヒド」と呼ばれる芳香成分によるものです。これは香りが特徴的なだけでなく、強い防腐・殺菌作用を持っています。そのため、刺身のツマに青しそが添えられていることもありますが、あれはこの抗菌作用を利用したものです。また、ぺリアルデヒドは食欲増進効果や胃腸を整える効果もあるとされています。
2-3.おすすめの青しそ料理
青しそ料理は細かく刻んで薬味に使われていることが多いでしょう。そうめんや冷ややっこ、納豆にも添えることで独特の風味が食欲をそそります。
しかし、栄養素を高く摂取するには「熱を加える」ことがおすすめです。もともとβカロテンの含有量が多い青しそは、油を使って熱を通すことでビタミンAの吸収率が高くなります。ビタミンAが豊富な食材はいろいろありますが、青魚に多く含まれる栄養でもあります。魚を揚げるときに青じそを巻いてからフライにすると、ビタミンAの吸収率をあげることができます。また、魚の臭みを取ることもでき、青しその風味とも相性が良いのでおすすめです。
3.赤しその特徴
3-1.赤しその栄養素
赤しそも基本的には青しそと同じ栄養分が豊富に含まれています。具体的にみると「ビタミンB1、B2、C、E」といったビタミン類が豊富であり、葉酸や鉄分も豊富です。貧血気味の方はもちろん、妊婦さんにも取ってほしい栄養が豊富です。また、βカロテンは青しそのほうが豊富なものの、赤しそにも含まれています。美肌効果に期待できるため、女性の方は積極的にしそを摂取すると良いでしょう。
そして赤しその色合いを出す「アントシアニン」が豊富に含まれています。これはポリフェノールの一つであり、ブルーベリーなどにも豊富に含まれています。アントシアニンは目のトラブルを解消し、抗酸化作用にも効果的です。日ごろからパソコン作業が多いといった方にもおすすめの栄養素でしょう。
3-2.赤しその旬とは
青しそは夏を中心に多く出回っていますが、赤しその旬は初夏のみです。市場に出回るのは6~7月が中心であり、スーパーで売られているのもこの時期を逃すとなかなかないでしょう。収穫としてはもう少し広範囲にわたって行われていますが、赤しそを欲しがる人の多くは「梅干し漬け」の際に色づけで行うことが多いため、梅が市場に出回る初夏限定で売られていることが多いのです。
青しそが葉っぱの状態で売られているのに対し、赤しそは枝付きのまま束ねられた状態で売られています。これは葉っぱにすると小さいことだったり、水分が抜けてパサパサになったりするからです。また、梅干しの漬けこみにつかったり、シソジュースとして使うには葉の状態だと小さすぎることがあります。一昔前では愛知県を中心に売られていた赤しそですが、いまではほぼ全国のスーパーで初夏に見られるようになりました。
3-3.おすすめの赤しそ料理
赤しそはもともと「漢方薬」として用いられています。漢方医学では「蘇葉(そよう)」と呼ばれ、精神安定剤としてさまざまな漢方薬に配合されています。そんな赤しそのレシピは、食卓に常に並べることができる「赤しその塩漬け」がおすすめです。赤しその塩漬けは、一度作っておくことで日々効率よくしその栄養素を摂取することができるでしょう。
赤しその塩漬け レシピ
材料
- 赤紫蘇の葉(中~大) 20枚~25枚
- 塩 小さじ一杯程度
- 水 適量
- 酢 大さじ1杯程度
作り方
- 赤しその葉を水であらう
- 保存容器に赤しその葉、塩少々、葉、塩の順番で重ねて入れる
- シソの葉が浸るくらい水を入れる
- ラップをかぶせてお皿などでかるく重しを乗せる。そのまま冷蔵庫で2日ほど放置する
- 貯まった水を捨てて葉の水分を軽く切る
- お酢を容器に入れて塩を少々振る。容器ごと振って酢と塩を混ぜる
- ラップをして再び冷蔵庫で1日寝かし、完成
出来上がった塩漬けは、赤しそのアントシアニンがしみだしてキレイな色合いになります。そのままごはんにかけて食べても良いですし、刻んでお茶漬けやおにぎりの具罪にして楽しんでも良いでしょう。
まとめ
しそは青でも赤でも一枚の葉に栄養素がギュッと濃縮されており、食べる量は少なくても栄養素の高い食品になっています。人を蘇生させる力があると信じられ、昔から漢方薬に用いられるほど栄養素が高い食材として使われてきました。
スーパーで売られているしそは青しそも赤しそもそれほど高額ではなく、気軽に購入することができます。とくに青しそは自分で育てるのも簡単であり、暑い時期に水をあげ続けるだけでぐんぐんと成長するでしょう。毎日気軽に摂取するには、しそを自分で育ててみるのも良さそうです。鉄分やビタミンを豊富に含んだ食材なので、薬味やジュースとして日常的に摂取し、美容や健康に役立てていきましょう。